2014年2月25日火曜日
包装設計と衝撃応答スペクトル、、、
衝撃応答スペクトル、皆さまご存知でしょうか。
SRS(Shock Response Spectrum)とも言われます。
落下試験などでは、よく内容品の発生加速度を計測して、合否判定の一助にしている方は多いと思います。
この場合、その多くは発生したピーク加速度を評価対象としているのではないでしょうか。
たしかに運動方程式F=maにおいて、加速度aが大きいほど、物体に大きな力Fが作用するため、危険(破損しやすい)になるということで、間違った評価ではありません。
ただ、加速度計測箇所において、発生する加速度についての合否判定は可能でしょうが、それ以外の箇所には、どの程度、加速度が発生しているのか?ということは、ピーク加速度のみではわかりませんよね。
そこで、「衝撃応答スペクトル」の出番です。
これは、発生した加速度が、個々の固有振動数(つまり、部品ごと)にどのように伝搬するかを、示したものです。
例えば、包装貨物落下試験で、貨物内にピーク加速度100Gが発生したとしたとき、別の箇所(加速度ピックアップがつけられないような箇所、、)では、170Gくらいが発生しているということを、数値計算して確認するものです。
※100Gとか、170Gの数字はあくまで例です。
このような評価をするための計測器はこちら
川口
2014年2月18日火曜日
包装貨物振動試験の基礎
包装貨物の性能評価項目には、振動試験があります。
振動試験の方法には、大きく以下の3つの方法に区分されます。
・正弦波試験
・掃引試験
・ランダム試験
従来、振動試験は正弦波試験、掃引試験が主流でしたが、JIS-Z-0200が2013年に改正された際、ランダム試験を優先的に採用するように変更されました。
ランダムと正弦波(掃引)との差は、加速度波形をある有限時間の範囲で切り取ったとき、正弦波であれば周波数と加速度が固定されており、ランダムの場合はその範囲で複数の周波数が同時に混在していることがあげられます。
つまり、ランダム試験は複数の周波数帯を含んでいるので、部品同士の同時共振を誘発することができ、実際の物流環境に近いモードを再現することが期待されます。
さて、正弦波、掃引試験を行う場合は、周波数、入力加速度レベルを規定すれば、試験できましたが、ランダム振動試験はどのように条件設定すればいいのでしょうか?
ランダム振動試験の試験指標は、パワースペクトル密度(PSD)が利用されます。
PSD導出の細かいことは、下記などご参照ください。
・斎藤勝彦、長谷川淳英、「輸送包装の基礎と実務」、幸書房
・神戸大学輸送包装研究室HPリンク
PSDはJIS-Z-0200にも記載があり、多くはこの条件で試験されることが多いと思います。
一方で、実際のトラック振動データを計測して、そのデータからPSDを導き出し、試験条件を作成する方法もあります。
その際、輸送環境記録計が使われます。
※JIS-Z-0232には、「可能な限り特定の計測データから得た加速度パワースペクトル密度で試験することが望ましい。」と記載されています。
川口
2014年2月4日火曜日
緩衝材料の特性② 緩衝係数曲線
前回に引き続き、包装用緩衝材の特性についてです。
緩衝設計を行う際のもう一つの指標として、緩衝係数があります。
緩衝係数Cは、落下試験での落下高さH、発生加速度G、緩衝材厚みTにおいて、
CH=GT
という関係があります。
したがって、必要な緩衝材厚みは、落下高さ、許容加速度、緩衝係数が既知であれば、T=CH/Gとして計算できます。
これより、緩衝係数は小さければ小さいほど、厚みが少なくて良い(効率的)となることがわかりますね。
さて、緩衝係数は緩衝材料の応力-歪曲線から導出することができます。
緩衝係数Cは、圧縮応力σと、その時の応力‐歪の面積εから、
C=σ/ε
として計算できます。
εは緩衝材の厚みと面積を掛け算すれば、緩衝材の吸収エネルギーに相当します。
応力は、加わる力Fと受け面積Aの比なので、F=ma=WG/Aとなり、質量がわかっていれば、加速度を求める材料になります。
(確認までに、Fは力、mは質量、aは加速度、Wは重量、GはGファクター、Aは面積です。)
緩衝係数曲線は応力-ひずみ曲線の時々刻々のσ、εから得られる数字を縦軸に、そのときの応力σを横軸にとると描くことができます。
上手くいくと、下記のような下に凸のグラフができます。(JIS-Z-0235引用)
細かい計算方法はJIS-Z-0235の付属書4に記載がありますので、ぜひご参照ください。
この図が得られれば、Cが一番小さいときの応力を採用し、許容加速度Gは既知なので、
σ=WG/A
A=WG/σ
より、緩衝材の使用面積が計算できますね。
厚みは冒頭に書いた通りです。
緩衝材料の動的圧縮試験には、きちんと試験装置が販売されていますことも付け加えておきます。
川口
登録:
投稿 (Atom)